2020年10月11日放送の『健康カプセル!ゲンキの時間』で、「味覚異常を徹底リサーチ! 原因と対策とは」について紹介されました!
教えてくれたのは、はくらく耳鼻咽喉科・アレルギー科クリニック院長・医学博士の生井明浩先生です。
目次
味覚異常を徹底リサーチ! 原因と対策とは
味覚異常とは、味を感知するセンサーが機能しなくなり食べ物の味を感じなくなることです。
味覚異常になる原因とは
▼生井明浩先生によると、
「まだわかっていないことも多いのですが、神経障害、多くはニオイの神経が障害されて、ニオイを感じないことで味も感じずらいと感じている方が多いようです」
新型コロナウイルスが鼻から侵入すると、ニオイや味覚を感じる神経を攻撃し、障害を起こします。
すると、味やニオイの信号が脳へ届かず、味を感じにくくなるんです。
神経の障害 → 味の信号が脳へ行かない → 味覚異常
味を感じる仕組みとは
▼生井明浩先生によると、
「舌(べろ)を始めとした口の中に味蕾(みらい)という味の細胞の塊がありまして、味の蕾(つぼみ)と書きますけども、味蕾です」
味蕾は舌全体、特に舌先や舌の奥に多く存在しています。
ここで食べ物の味を感知し、その情報が神経を伝わり、脳に送られているんです。
つまり、味蕾で味を感知すると、その情報が神経を通り、脳に送られるため味を感じることになります。
味覚の地図ってあるの?
お笑いコンビ・うしろシティ
「この場所で甘みを感じるとか、苦みは奥のほうなんですよとか、味覚の地図的な」
確かに舌は場所によって、感じる味が違うという話、聞いたことありますよね。
▼生井明浩先生
「これはズバリ、(味覚の地図は)嘘です。いろんな研究があるんですけども、すべて、どこの部位でも味を感じていると考えられています」
★実はひとつの味蕾の中に基本の味とされる甘み、塩み、酸味、苦み、旨味のすべてを感じる細胞が存在しているんです。
味蕾の機能が低下すると…
そんな5つの味を感じる味蕾。その機能が低下すると、健康にも大きな影響が!
▼生井明浩先生によると、
「どんどん調味料を増やしたり、濃い味付けにして塩とか砂糖を摂り過ぎて、それが長く続くと高血圧とか糖尿病とか、そういうことになってしまう可能性があります」
味覚の機能が低下すると、味付けの濃いものばかりを求めてしまい、生活習慣病のリスクが上がってしまいます。
味覚異常になる人は50歳以降に多く、中高年の方は特に注意が必要です。
味覚異常の具体的な原因とは?
味覚異常を体験したという人のエピソードを元にその原因を、生井明浩先生と一緒に探っていきます。
お話を伺うのは、福岡にお住まいの西本健矩さん(38歳)、今回はリモートで参加していただきました。
当時どのような体験をしたのでしょうか。
西本さん
「7年前にですね、ラーメンを食べた時に味を感じなかったんですね。ちょっとビックリしたことがあったんですね。とんこつのニオイはするんですよ。で、いつも通り食べると、お湯に浸かった麺を食べているような感じですね。
塩分とか旨味とかそういったものを全く感じなくて」
当時31歳だった西本さん。
ある日とんこつラーメンを食べたときに、味覚の異変に気が付きました。
旨味が詰まっているはずのとんこつスープがまるでお湯のように感じられたのです。
さらに、西本さんは、
「味がしないせいか、ゴムみたいな感じがしましたね」
味を全く感じられない。
明らかにおかしいと思った西本さんは、
「自宅に帰ってですね、塩をちょっと直接舐めてみようと思って、舐めてみたんですけど、これがわからなかったから異常だなと思った」
うしろシティ
「前兆はあったんですか?」
西本さん
「前兆はたぶんあったんだと思います。1年ぐらい前には「味が薄いな」と思うことは若干あったのは覚えています」
そこで、すぐさま病院へ。
医師からは味覚に異常が現れる病気、「味覚障害」と診断されました。
しかし、
西本さん
「「正直原因がわからないですね」ということで、精神的なものとかストレスとか先生は仰って」
うしろシティ
「ハッキリとした原因は今も分かっていないってことですね?」
西本さん
「ちょっと原因は(今も)分からないですね」
そこで、生井明浩先生が西本さんに当時の生活について問診しました。
西本さんの味覚障害の原因はわかるのでしょうか?
生井明浩先生
「当時はどんな食生活を送られてました?」
西本さん
「一人暮らしをしていたときだったので、外食をしたりとか、家で料理をすることはなくて、コンビニ弁当とか、味に対して濃いものを食べ過ぎてたんですけど」
当時西本さんは外食で済ませることが多く、偏った食生活を送っていたと言います。
▼生井明浩先生
「味覚障害の原因の多くは、食生活の乱れが原因と考えられているので、原因を調べるために検査とかしないといけないんですけれども。当時の西本さんの味覚障害の原因は、亜鉛不足であった可能性が高いのではないかと思います」
亜鉛とは、たんぱく質の合成や骨の発育など身体の新陳代謝には欠かすことのできない必須ミネラルです。
★亜鉛は味を感じる味蕾の新陳代謝や味を感知するときにも使われており、味覚にとって重要な働きをしているんです。
そのため、亜鉛が不足すると味蕾の機能が低下し、味覚障害を引き起こしてしまうんです。
生井明浩先生
「味覚障害の原因の多くがですね、7割ぐらいは亜鉛不足が関係していると言われているんですね」
亜鉛は体内で作ることができない成分で、食事などから摂取するしかありません。
そのため、偏った食生活を長く続けていると、亜鉛不足に陥ってしまいやすいんです。
さらに他にも亜鉛不足を加速させてしまう原因が!?
忙しい現代人が陥りがちな亜鉛不足を加速させる原因とは?
西本さん
「忙しかった時期はインスタントラーメンとかインスタント食は必須でした」
西本さんの食生活について、生井明浩先生は、
「インスタント食品みたいな(一部の)加工食品には、少し亜鉛の吸収をブロックするフィチン酸が入っているものが多いんです」
一部のインスタント食品や加工食品には、食品添加物の一種で食べ物の安全性を保つ効果のあるフィチン酸が使われている場合があります。
食品添加物(フィチン酸・ポリリン酸)
一部のインスタント食品や加工食品に含まれている場合があります。「増粘剤」「結着剤」などと表記されることが多いです。
生井明浩先生
「それを多量に食べると、亜鉛をいくら摂っても吸収されない」
西本さんのように偏った食生活を長く続けていると、味覚障害になるリスクがあるので、注意が必要です。
西本さん
「味だけが本当に全然来なくて、半ば諦めてたというか、一時期悩みましたね」
うしろシティ
「その期間てどのくらい続いたんですか?」
西本さん
「(味覚障害は)3年続いた」
味覚障害は治るまでに長期間が必要と言われています。
異常を感じてから(発症から治療まで)6カ月を過ぎると、とたんに治りにくくなるというデータも報告されているんです。
しかし、西本さんは味覚障害と診断されてから3年後、徐々に味覚を感じるように。
そのきっかけとは?
西本さんは味覚に異常を感じてから1年後、現在の奥様・紗也香さんと結婚、それから奥様の手料理を食べるように。
当時味覚が戻っていなかったので、料理のリクエストをすることはなかったそうですが、奥様の手料理を食べ続けているうちに西本さんの味覚に変化が現れたと言います。
亜鉛不足による味覚異常を改善するには、家族のサポートが大切です。
味覚障害の主な症状
・味覚減退・味覚消失
・自発性異常味覚
・解離性味覚障害
・異味症
・悪味症
・味覚減退・味覚消失
味覚障害の約8割に当てはまり、「味を感じにくい」「全く味を感じない」などの症状
・自発性異常味覚
口の中に何も入っていないのに味(苦味)を感じること
・解離性味覚障害
5つの基本味の中で特定の味だけ感じない
例:イチゴケーキを食べて、甘さだけを感じないなど
・異味症
本来と異なる味を感じること
例:甘いはずのケーキが苦いなど
・悪味症
何を食べても嫌な味がすること
日本の全世代で不足している
MC 西尾由佳理さん
「私たちの亜鉛って足りているんですか?」
生井明浩先生
「亜鉛はですね、厚生労働省が発表している「日本人の食事摂取基準」によると、全世代不足しています。つまりですね、誰もが味覚異常になってしまう可能性があるので、積極的に亜鉛が多い食事を摂ってほしいと考えています」
そこで、積極的に食べたい亜鉛を多く含む食品がこちら。
・肉類:牛肉・レバー
・乳製品:チーズ
・魚介類:牡蠣・カニ・ウナギ
・海藻類:ワカメ・ひじき・海苔
・その他:ゴマ
出典:日本食品標準成分表2015版(七訂)
亜鉛は肉類や乳製品、魚介類など幅広い食品に含まれていますが、なぜ多くの人が不足してしまうんでしょうか?
生井明浩先生
「現代人は寝不足とか過労によって、ストレスを抱えている人がすごく多いんですね。ストレスは多くの亜鉛を消費してしまうので、不足しがちになります」
味覚異常のその他の原因とは?
今回、味覚に関するお悩みがあるということで、参加していただいた専業主婦の亀卦川(きけがわ)さん(47歳)
亀卦川さん
「辛い物が大好きで、何にでも唐辛子をかけて食べたいんですよ」
とにかく辛い物が大好きな亀卦川さんはおそばを食べるときも麺が真っ赤になるほど七味をかけるんだとか。
亀卦川さんのように辛い物を食べ過ぎると味覚異常になってしまうんでしょうか?
辛い物が大好きな亀卦川さんですが、食べ過ぎると味覚異常になってしまうのではと心配なんだそう。
▼生井明浩先生
「実は辛さっていうのは、味の中には入っていなくて痛さなんです」
辛味というのは、味蕾で感じる5つの味には入っていません。
実は味蕾の周りにある知覚神経が痛さを感じ、それを私たちは辛いと表現しているんです。
亀卦川さん
「摂り過ぎても味覚異常にはならない?」
生井明浩先生
「ところがですね、味の細胞の味蕾、あるいは味蕾の細胞の周囲の細胞を阻害しますので、味の感度が悪くなるというデータがあります」
そう、辛い物を過剰に摂ると、味蕾にダメージを与え、味覚の機能が低下するおそれがあるんです。
では、亀卦川さんの味覚は大丈夫なんでしょうか?
そこで、病院の味覚の検査でも使われている「ろ紙ディスク検査」を行うことに。
●5段階に分けた 甘味 塩味 酸味 苦味の味を舌の上にのせて味を感じるか調べる検査
味の濃さが5段階に分けられた液体を舌に付け、認識できるかをテストします。
レベル1~3までに味がわかれば正常、4以上の味を認識できないと味覚に異常がある味覚障害と診断されます。
結果、亀卦川さんは3の味が認識しにくく、舌に軽い炎症も見られたため、軽度の味覚障害が判明。
辛い物の食べ過ぎは注意が必要です。
ちなみに辛い物を食べるときは、こまめな水分補給を行うことがポイントになります。
口の中に辛味成分を長く滞在させないようにするのがいいそうです。
味蕾にとって良くない行動とは?
うしろシティ
「味蕾の大切さがすごいわかったんですけど、逆に味蕾に良くない行動ってあるんですか?」
生井明浩先生
「味蕾は意外と繊細なんです。ですので、舌(べろ)を歯ブラシなどでこすると(味の細胞の塊の)味蕾が阻害されますから、あんまりごしごしこすらないほうがいいですね」
ちなみにツルツルの舌はキレイに見えますが、実はこれ、舌乳頭(ぜつにゅうとう)という舌の表面にあるザラザラが萎縮し、味蕾の機能が低下してしまった状態
ある程度ザラザラしている舌が健康である証なんです。
歯ブラシで舌を過剰に磨くと、味蕾が傷ついてしまう可能性があるので、舌の汚れが気になる方は、「舌専用ブラシ」を使いましょう。
味蕾の機能が低下する原因とは
さらに他にも味覚の機能が低下する原因が!
そこで、味覚が少し心配という65歳の吉川さん(男性)にお話を伺います。
吉川さん
「唐揚げですとか下味がついていても、ソースをドバッとかけてみたり、味が濃くないと満足感を得られにくい」
テレビの前のあなたや周りの家族の方も吉川さんのように料理の味がもの足りなく感じたり、調味料をかけすぎたりしていませんか?
こうした人の原因は?味付けが濃くなる原因は?
▼生井明浩先生
「原因は加齢、年をとることですね」
実は味蕾の数は、加齢によって減少。
70歳以上になると、乳幼児と比べて、半分以下になってしまうというデータも。
つまり、吉川さんのように料理の味付けに満足感を得られないのは、味蕾の数が減少しているからと考えられます。
味覚の低下を防ぐ方法とは?
味蕾の機能を取り戻すには、亜鉛を含む食材を積極的に摂ることが大切ですが、他にも味蕾の減少を予防する簡単な方法があります。
▼生井明浩先生
「こちらです。ガムを噛むと唾液が出やすくなります。唾液をたくさん出すことが加齢による味覚の低下を防ぎます」
そう、唾液は味覚にとって重要な働きをしています。
味の物質は唾液に溶けることで、味蕾全体に伝わります。
しかし、唾液量が減ると、味蕾が使われなくなるため、機能が低下し、減ってしまうんです。
ガムを噛み、唾液を出すクセをつけることで、味蕾の機能を維持することにつながります。
自宅でできる味覚チェック法とは
うしろシティ
「実はご家庭で簡単に(味覚)チェックできる方法がありますので、今回そちらをご用意しました」
味覚チェックするために用意するのは、
水100mLに砂糖1gを混ぜたもの
ティースプーン1杯分を口に含み、砂糖の甘みを感じられるかどうかで、味覚に異常があるかどうかをチェックできます。
生井明浩先生
「多くの味覚異常は、早い段階では気づきにくいことが多いんですね。
できるだけ仲間、友達と一緒に(三密を避けながら)楽しく食事を取ってほしいと思います。
もし気になる人は近くの耳鼻咽喉科に電話をして、味覚異常のことについて、相談していただければと思います。
今朝の処方せん
味が変 早めの受診で 明るい未来(味蕾)
まとめ
食べ物の味がしなくなるなんて、人生の楽しみの多くを失ってしまったと考えてもおかしくないことですよね。
しかし、もし味覚異常になったとしても、原因と対策を知ってさえいれば、かなりの気持ちの余裕ができるのではないかと思います。
身近な問題でもあるので、味覚異常について、考えるきっかけになれば幸いです。